平成17年2月から4月にかけて、伊賀地方の伝統工法による炭窯作りにトライしてみました。
先ずは、窯作りの場所の選定します。条件は山の斜面で水捌けの良い場所を選びます。今回の選んだ場所は、昔の炭窯の跡地です。やはり先人の知恵は素晴らしく、その窯跡の場所は付近でも最も水捌けがよく、土質も最適な場所でした。
草刈や木の伐採をすると昔の窯跡が姿を見せました。まずはみんなで記念写真を。
古い窯跡を再利用するとは言っても、作業は全く新たに作るのと変わりません。窯作りの第一は、穴掘り。穴の直径は2.5メートルです。ただし内面に石積み壁を作るため、窯内の直径は2.1メートル、高さは1.1メートルと設定しました。
次に石積みで外壁作りです。(斜面のため山側は不要、谷側のみに壁作りをします。)素人ばかりでの石積みは、なかなかの苦労。(^^;)
伝統工法は難儀の連続ではあったが、それでも何とか外壁の形ができました。素人にしては、まあまあうまくできました。なかなか味があって良いのではないですかぁ〜
窯の火口とは反対側に、煙突につながる煙道を作ります。
窯の内壁は、煉瓦状の石をよく練った粘土で固めながら積んで作ります。この時、粘土はダンゴ状にし、石と石の間へ投げつけるようにして塗りつけ、隙間なく表面が凸凹にならないよう綺麗に仕上げることが大切なんです。炭窯は、窯そのものが大きな焼き物と言っても過言ではないのですが、内壁の仕上がりが悪く煙が漏れるようでは炭窯になりません。実は内壁作りは、窯の上部ドームの内壁作りと共に窯のでき具合を左右するほどの重要な作業となります。
これは粘土をよく練っているところです。粘土を練っている人の後方に見えるのが、窯の内壁に使用するため形や大きさを煉瓦状に加工した石です。
窯内壁が完成したところです。粘土でとても滑らかに仕上がっています。
煙道上に煙突を設置しているところです。
窯内の床面を平らに整えます。
窯の内部が大分できあがってきました。
同じ長さに切った木(約1メートルのクヌギ)を窯内へと縦に詰めていきます。
木の切断面が床に直接べたっと接しないよう、小石を噛ませながら少し傾き加減にします。こうすることで木全部(下の方も)が炭化しやすくなります。隙間なくできるだけ綺麗に詰めていきます。
詰めた木の上に「なる」(小枝で作った木片)を満遍なく乗せていきます。(注)「なる」が燃えて窯の内部温度を約700度に上げ、その熱で、「なる」の下に立てた木が炭化し炭ができます。
「なる」をドーム状に積み上げ、やれやれ一息です。かなりな量を積みました。
沢山積み上げた「なる」の上にむしろを敷きます。
次にドーム上の窯の上部を作ります。半粘土状の土を盛り付け、上から木槌で窯打ちします。これはなかなかの重労働です。しかし、窯の上部内壁を形成する重要な作業であり、土が粘土状になるまで何度も何度も打って仕上げます。
窯のドームが崩落しないように、今回の窯作りでは不本意ながらドームに鉄筋を入れ補強することにしました。伝統工法にこだわりがあったので、これは一同少々残念ではありましたが。更にその上に盛り土して、再度土を打って窯上部(ドーム)を仕上げました。
最後に石と耐熱タイルで火口を作り、炭窯の完成です!
炭窯に屋根付けするための支柱、梁、垂木などを建設したところで火入れをしてみました。
直ぐに勢いよく煙が出始めました。
仕上げは屋根のトタン張り。火が入った窯の上での作業となり、事故のないよう慎重に作業しました。本当はトタンを張り終わって、屋根を仕上げてからの火入れの方がベターなのですが。
約1週間で最初の炭焼きが完了しました。初釜は、炭作りよりも寧ろ炭窯作りが目的です。炭窯の内壁を焼き物状に仕上げるための作業です。なので炭の方はあまり良質のものはできません。2回目からが、本当の炭焼き。さて、この窯から良い炭が作れるのか!今後が大いに楽しみです・・・